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甲状腺疾患



はじめに

甲状腺は首(気管)の前方にある蝶のような形をした小さな臓器です。この甲状腺から分泌されるホルモン(甲状腺ホルモン)には体内の代謝を刺激し促進する作用があり、組織を維持するとても重要な役割があります。
甲状腺の病気には、①甲状腺ホルモンの量が変化する病態、②甲状腺内に腫瘍ができる、あるいは甲状腺自体が大きくなる甲状腺腫など形の問題があります。①について、甲状腺ホルモンをつくる働きに異常が起き、甲状腺ホルモンが過剰(甲状腺機能亢進症)になったり不足(甲状腺機能低下症)したりすることで体調に変化が起きます。
まず、甲状腺機能亢進症とは甲状腺ホルモンが過剰に作られ、血液中の濃度が増えると全身の代謝が過度に高まります。バセドウ病の他に破壊性甲状腺炎といった病態もありますが主にバセドウ病について説明致します。
次に、甲状腺機能低下症ですが、甲状腺ホルモンが減少してしまい代謝が遅くなってしまう病態で、主に橋本病について説明します。

甲状腺機能亢進症(主にバセドウ病)

(1)病気の解説
甲状腺疾患は全体的に女性に多い病気であり、バセドウ病も同様です。20~50歳代の比較的若い方に発症することが多いです。
甲状腺ホルモン過剰の状態では代謝が異常に高くなり、多汗、暑がり、食欲亢進、体重減少などの症状が起こります。その他、頻脈や下痢、手足のふるえ、倦怠感、精神的ないらつき、不眠、集中力の低下など様々な臓器や神経系に影響を及ぼします。
(2)診断のしかた
上記の症状に加え、甲状腺ホルモンが高いこと、TSH受容体抗体(TRAb)などの自己抗体が陽性であること、超音波検査(エコー)での血流増加などを総合して診断します。その他の甲状腺機能亢進症を起こす亜急性甲状腺炎など破壊性甲状腺炎、機能性結節などを血液検査やエコー等画像検査で鑑別できます。
(3)治療のしかた
日本では抗甲状腺薬のメルカゾールやプロピルチオウラシルなどの内服が主流です。副作用(顆粒球減少や肝機能障害)を観察しつつ慎重に治療します。甲状腺ホルモン値が高く、動悸などひどい場合にはヨードを併用することがあります。その他、難治性や再発例については放射線治療・手術等あり、浜松医科大学病院と緊密に連携しながら治療します。
(4)この病気と思ったら
女性では更年期障害と区別がつきにくいのですが、先の多汗、暑がり、食欲亢進、体重減少、頻脈や便通の異常(軟便、下痢、頻回な便通)などあればご相談ください。精神的ないらつき、不眠、集中力の低下などもみられることもあります。

甲状腺機能低下症(主に橋本病)

(1)病気の解説
橋本病は甲状腺に慢性の炎症が起きている病態であり、慢性甲状腺炎ともいいます。
甲状腺の病気のなかでもとくに女性の割合が多く、30~40歳代(弱~中年女性)が多いとされています。
原因はバセドウ病と同様、自己免疫異常です。これによる炎症により甲状腺がはれたり、経過中に甲状腺機能異常を起こすことがあります。
橋本病の全てが甲状腺機能低下症になるわけではありません。甲状腺の炎症が軽度であれば甲状腺機能は正常で、炎症が進行すると甲状腺の働きが悪化し甲状腺機能低下症となります。甲状腺機能低下症の明らかな症状のある方は橋本病の1割程度で、2割程は症状のない軽度の低下症、残りの約7割は甲状腺機能正常です。
(2)症状
甲状腺全体がはれて大きくなる甲状腺腫として検診などで指摘されることもあります。
甲状腺機能低下症となった場合は、血液中の甲状腺ホルモンが不足し代謝が悪くなり次のような様々な症状があらわれます。全身、特に手や顔のむくみ、皮膚の乾燥、食欲が落ちているにかかわらずむくみや便秘などで体重が上がる、無気力、月経異常、などといった症状があります。また心臓の周りに水が貯まり動きが悪くなる、心臓が大きくなることもあります。甲状腺機能が正常であれば何も症状はありません。
(3)診断のしかた
上記症状や触診での甲状腺腫大や硬さに加え、検査として血液での甲状腺ホルモン低下、TPO抗体など自己抗体の測定をすることで診断できます。補助的にエコーを使い、合併することのある悪性リンパ腫やその他の腫瘍を診ることもあります。
(4)治療のしかた
甲状腺ホルモンが低下している場合ホルモンの補充を行いますが、ホルモン値が正常であれば経過観察となります。妊娠中(ホルモン値によっては胎児への影響がでることもあります)や、高齢者で軽度の認知症の原因となっている場合など、特殊な状態ではホルモンを補充することもあります。
(5)この病気と思ったら
検診での甲状腺腫大を指摘されることが最も多いと思われます。むくみや過多月経など先の症状がみられる場合にご相談ください。また橋本病が判明している女性で妊娠を考えている、または妊娠した場合は必ず主治医に甲状腺疾患があることを伝えてください。

甲状腺眼症

バセドウ病に合併することが多いです。ものが二重に見える複視、眼球の後ろにある組織が肥大することで起こる眼球突出、充血などの症状があります。症状や診察でのスコア、MRI検査所見、血液でのTSAb抗体などで診断および治療の必要性を検討します。この場合も、浜松か大学病院と緊密に連携しながら治療を行います。

甲状腺腫瘍

検診での指摘、その他CTなどで偶然見つかる場合が多いです。ホルモンと直接の関係はなく自覚症状も基本的にはありません。悪性であったとしても90%以上を占める甲状腺乳頭癌は予後良好なものがほとんどであり、進行も非常に遅いものが多いのが特徴です。
当院では超音波検査は行っております。良性と判断されたのものや1cm未満の腫瘍(細胞診の適応外)の経過観察、手術後の経過観察などは、当院で毎週火曜午後に超音波検査を行っております。